世界母乳の日、世界母乳育児週間によせて

2025/08/01

2025年(令和7年)8月1日

世界母乳の日、世界母乳育児週間によせて

 一般社団法人日本母乳の会 代表理事 永山善久

 

今年も、「世界母乳の日」「世界母乳育児週間」がやってまいりました。1990年8月1日、WHOとユニセフは先に出した共同声明「母乳育児の保護、促進、そして支援-産科施設の特別な役割」(1989年)をさらに進めるために、30か国の政府、複数の国際団体とともにイタリア、フィレンツェの国際児童開発センターにおいて「イノチェンティ宣言」を採択しました。それを記念して、WHOとユニセフの援助を受けて設立された世界母乳育児行動連合(WABA)が、1992年に8月1日を「世界母乳の日」、8月1日から1週間を「世界母乳育児週間」と定め、母乳育児を奨励するキャンペーンを始めました。それに呼応するように、日本では故山内逸郎先生の呼びかけで1992年8月1-2日に「母乳をすすめるための産科医と小児科医との集い」が大阪で開催されました。この集会を元に日本母乳の会が設立され、毎年、「母乳育児シンポジウム」を開催して参りました。

私たちが運動を始めた30年前に比べ、母乳育児は一般にはよく認識されましたが、急激な社会の変化の中で母乳育児支援にとっては再び難しい状況が増えて来ました。AIの導入による効率重視、コストパフォーマンス重視の風潮は、母親の意識を変え、医療スタッフの意識も変化してきました。急激な少子化の進行、労働人口の減少、物価高騰は医療経済、病院・医院経営に大きな負荷を掛け、現場での母乳育児支援にも影を落とすようになってきました。しかし、2億年続く哺乳動物の歴史の中で、母乳育児の重要性は不偏のはずであり、今の哺乳、母乳育児の変化は一瞬のことに過ぎないのかもしれません。そこで今年の第33回母乳育児シンポジウムのメインテーマは「赤ちゃんの力、お母さんの力を引きだす母乳育児―今の時代に―」にしました。このテーマのもと、①「できるところから始めよう10カ条―どんな時でも母乳育児ができるように―」、②「時代とともに 母乳育児―変えてはいけないもの・変わっていくもの」、③「赤ちゃん目線の産後ケア」の3つのシンポジウムを企画しました。更に、実行委員会企画として行った「自治体(関東)の母乳育児支援への取り組みの現状調査」アンケート結果と、「全国分娩施設アンケート」結果を報告します。メインイベントである特別講演では、東京農工大学の永岡謙太郎先生から「母乳が整える子の腸内細菌―脳腸相関との関係―」のご講演いただきます。実験データをもとに母乳育児の基本的な重要性を解説していただけるものと期待が膨らみます。

今年も連日熱中症警戒アラートが発令される酷暑が続いておりますが、暑さに負けず、会場で皆様と母乳育児支援について熱く語り合いたいと思っております。

 

 日本母乳の会は「1人でも多くの母子が母乳で育てられる幸せを」をモットーに活動を続けてまいります。今後ともご支援賜りますようお願い申し上げます。