前回のシンポジウム(第33回)

◎第33回母乳育児シンポジウムを終えて--メッセージを届けられたシンポジウム

 

       永山 善久(小) 第33回母乳育児シンポジウム実行委員長 日本母乳の会 代表理事  

                    

 第33回母乳育児シンポジウムが「赤ちゃんの力、お母さんの力を引きだす母乳育児―今の時代に―」をメインテーマにして無事開催されました。

これまでの実行委員会は、その地域のBFH施設が中心になって母乳育児支援の輪を広げるために、広く委員を募って構成されることが多くありました。2016年に新潟で第25回を開催したいときはそうでした。周産期センターが中心になって、教育機関、行政まで巻き込んで、最終的には総勢70名を超えてしまいました。議論はまとまらず、実行委員会のための会議という具合で会議を重ね、グループワークをしたりしました。それはそれなりに意義があったと考えていますが、今回は今後の試金石になるようなコンパクトな実行委員会を構成しました。理事の他、BFH施設・非BFH施設6施設から委員をお願いしました。ZOOM会議を併用し、現地参加の委員は毎回6~7名程度でした。理事が入っているので、実行委員会での議論は比較的スムーズにまとめることができました。

一番苦労したのは特別講演でした。日程などの都合で承諾が得られず、永岡先生に依頼できたのは4月になってからでした。でも、苦労した分、心に残る講演を聞くことができました。マウスの母乳中の過酸化水素が乳酸菌優位の腸内細菌叢を形成し、腸内細菌叢由来の代謝物を介して脳の遺伝子発現にエピジェネティックを起こし脳の髄鞘発達に影響を与えているという事実は衝撃的でした。ある時期を逃してしまうと遺伝子発現の差を取り戻すことができないというマウスに起こっていることがヒトに起こらないとは到底言えないでしょう。安易に「乳汁にこだわらず、無理をしない母乳育児をしましょう」と言って大丈夫なのかと背筋が寒くなる気がしました。

今回の実行委員会企画では2つのアンケート調査を行いました。全国分娩施設における分娩、母乳育児支援に関する調査と、関東地方の自治体における母乳育児支援の取り組みの現状調査です。アンケート依頼の発送数は2000件と370件に及び、運営局には多大な負荷をかけてしまいました。調査期間は短かったのですが、それでも心ある分娩施設、自治体はアンケートに協力してくれ、不思議なことにいずれのアンケートも回答率は20%でした。シンポジウムで発表した結果の他に、詳細については母乳の会ホームページにも後日掲載しますので参考にして下さい。

シンポジウム1「できるところから始めよう10カ条-どんな時でも母乳育児ができるように―」、シンポジウム2「時代とともに 母乳育児-変えてはいけないもの・変わっていくもの―」、シンポジウム3「赤ちゃん目線の産後ケア」、どれもメッセージを届けられるシンポジウムであったとは自画自賛でしょうか。関係した皆さんに感謝したいです。ありがとうございました。